兵庫県尼崎市のJR福知山線脱線事故から5年を前に、事故を起こした電車に乗務していた松下正俊車掌(47)=休職中=が24日、事故現場を訪れて献花し、心境を語った。先月から個別に遺族との面会を始めたという。「道義的責任を感じている。なるべく多くの遺族に会い、事故当時の状況を説明したい」と話した。
松下車掌は月命日にあたる先月25日、妻を亡くした遺族の男性(53)からの要望で自宅を訪れ、仏壇で手を合わせた。脇には家族全員で撮影した笑顔の写真が飾られていた。男性は事故には触れず、家族の近況を尋ねた後、「ここをお地蔵さんと思っていつでも気軽に来てください」と語りかけたという。松下車掌は「ごく普通の生活が事故によって壊されたと実感した」と振り返った。
事故当時の惨状は、今も脳裏に焼きついている。現場にいながら乗客の救助をしなかったことで批判を浴びたが「結果論だが、もう少しなんとかできなかったかと反省している。お客さんを無事目的地に届けるのが仕事なのに。パニックで体が動かなかった。途中で投げ出した」。遺族と面会を始めた理由については「人としてやらなければと思った。乗り越えないと前に進めない」と語った。
会社への不信感は根強い。車掌としての地位確認などを求める訴訟を大阪地裁に起こし、現在も係争中だ。何度も会社主催の被害者説明会への出席を求められたが、拒否し続けてきた。「会社は自分だけを悪者にし、つるし上げにしようとしている」。25日の追悼慰霊式にも出席しない。ただ現場に行って手を合わせるつもりだ。
遺族の反応は複雑だ。面会した男性は「謝罪を求めるつもりはなく、一度お参りに来てほしかった。これからも会う気持ちはある」と話す。しかし次男を亡くした上田弘志さん(55)=神戸市北区=は「社員なら会社主催の説明会に出てくるのが筋。個人的に会いたいというのは身勝手だ」と指摘した。【牧野宏美、衛藤達生、加藤美穂子】
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